「協同労働の協同組合」法の骨子の解説

             この法律を制定する目的、その政策的効果

この法律は、持続可能な循環型経済への転換が切に求められる時代に、自己の責任で、コミュニティのニーズを満たそうとする人々の起業精神を鼓舞し、促進するものです。とくに、ケアを必要とする人々の自立を助ける生きがい就労、ジェンダーギャップの克服、高齢者の就労支援に役立ち、福祉、環境、教育、ITなどの分野で価値ある仕事をしたいと願いつつ、労働市場の周縁にあって仕事につけないでいる若者に対し連帯した力による起業の機会を提示するものです。EU(欧州連合)は、こういった起業を地域・若者・社会サービスという概念で語られる第3システムの中核的制度に位置づけ、700万人の就労機会確保につなげようとしています。

            骨子の位置と構造

骨子の前半は、協同労働の協同組合(以下、組合)の「要件」で、これを満たすものを協同労働の協同組合と称します。その後半は、この組合に生かされるベき「効果」を掲げるものです。

 「要件」は、現在のICA協同組合原則(資料参照のこと)に拠りつつ、目的、組合員、組合の組織、組合の社会的性格の点で、現行の協同組合諸法との相違点、棲み分けを明確にするものです。

 「効果」は、既存の協同組合法にないか、一般化されてはいない仕組みを、この協同組合において、活用できるようにするものです。例として、「NPO」法(特定非営利活動促進法、以下、NPO)で導入された認証による設立、農協法、水協法で採用している商法に準拠した理事会構成があげられます。

 骨子のキーワードは、協同労働者、自立的な仕事起こし、協同労働の協同組合、社会に開かれた協同組合、です。

● 協同労働者とは何か  雇用関係のない働き方をする人

 起業をめざして共に出資し、共に働き、共に経営をする中で一人一人が労働において自立しつつ、利用者と協同する働き方は協同労働と称されます。この働き方は、「自発的に結びつく人と人との団体」(ICA定義の一部)である協同組合においてこそ、真価を発揮することができます。協同組合の仕組みの下で、そういった働きかたをする人々が協同労働者です。故に、この組合においては、「組合員は主として従事労働者からなり、従事労働者は原則として組合員からなる」(骨子3.前段)ことになります。

 この要件は、中小企業等協同組合法の企業組合の仕組みとは異なります。企業組合では、小数の組合員が多数の労働者を雇用することができます。

● 協同労働による仕事起こしが組合の目的

 この組合の目的は、人と地域に役立つ仕事を自ら起こし、そして、協同労働を通じて自発的な就労の場を作り、拡大することです(骨子1.)。この目的を推進する協同組合は、コミュニティのニーズを事業にして剰余を残しつつ、協同組合原則に則って組合員に就労の場と生計の道を保障し、就労する意思と能力のある人々を構成員とするものです。これは、生協と区別される最大のポイントです。生協は、「生活向上」を消費の面で図ることを目的とする消費者の協同組合です。

 それは、また、「ボランティア活動」の促進を図るNPO法とも相違します。

 中協法は、大企業優位の市場において、中小企業に「公正な経済活動の機会」を与えることを目的とし、事業を協同組合の形で定着させるのではありません。株式会社や有限会社に転換することも促進され、中小企業全国中央会の調べでは、企業組合の40%弱が組織転換を望んでいます。

 ところで、既存の協同組合は、認可制度によっています。しかし、冒頭に述べたように、仕事起こしの促進を目的とするこの法律は、組合要件を満たす場合に認証により協同組合として設立できるよう手続きを簡易なものにする必要があります(骨子5.)

● 協同労働の協同組合

 この組合は出資、労働、経営を三位一体のものとしています (骨子の2)

 「働く意思のある」者が出資をして組合を設立し、設立された組合において、能力に応じて就労に従事するだけではなく、組合の経営、管理を自ら行う。そして、剰余の配分、積立金等への繰り入れについても組合員総()会において決定をする。これは、働く者が自立する仕組みです。

 協同労働の協同組合の社会的経済的責任を確保する上で、組合員による管理、運営は、「社会監査、社会評価を含めて『公開性』、『透明性』の原則」や「原則として商法に準拠」(骨子6.)するいわれがあります。

 責任を確保する仕組みに行政の公開の流れや、組合員による発意を組み入れ、組合または組合員の申し立てによる行政庁による監督手続きも必要(骨子9.)と考えます。こういった仕組みは、NPO法にも既に導入されています。

● 社会に開かれた協同組合

 自立し、社会参加を促進する役割 
 組合は、地域社会における連帯と協力をその発展の基礎に置いています。そのために、
組合の仕事起こしや就労機会の拡大にとって、組合の事業より利益を得る人々の自立の意思と思いは不可欠です。例を介護や障害者ケア、青少年の学習支援にとりましょう。こういった場面でサービスを受けることで自立し、社会参加したいという利用者の願いがあって、ニーズが現実のものとなり、そうしてサービスの開発につながることになります。故に、サービスの提供者と利用者との間で協同、共感、配慮といった関係が必然的に成立します。ここにおいて、公共的サービスに責任を負う自治体とその主たる担い手であるこの組合との間に、地域起こし、地域福祉の充実を目的とする新しい連帯・協力の関係が成立する(骨子8.)ことになります。
 
 不分割の協同基金

 組合においては、また、剰余のうちより「就労機会の拡大、教育研修、福祉の向上に貢献できるよう」、毎事業年度においても、解散にあたっても組合員に配分されることのない不分割の協同基金が積立られます(骨子4.)。この基金は、解散する場合には、他の協同労働の協同組合に譲渡されます。

 この基金については、租税特別措置法において協同組合に認められている非課税積立金の条項の援用により保障され得るものです(骨子7.)。 

このような理由で、地域社会におけるニーズに答えようとする協同労働の協同組合は、利用者にも組合員となる道を開く一方で、「地域に必要な事業を起こせるよう、事業目的に賛同する市民や地方公共団体を含む出資者も組合員になれる」(骨子3.後段)と、としました。

ちなみに、こういった組合員制度を複合協同組合と称しますが、1990年代にイタリア、スペイン、フランス等で登場した社会的協同組合において認められているものです。欧州の経験にも学びながら、わが国の法制度との整合性に留意しつつ、複合的協同組合制度の可能性を追求したい、と考えます。



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